レンゲショウマ完成
自分でブログを書こうとしてびっくりしました‼️
なんと前回のアップは8月1日!
いかに自分に余裕がないのかがわかりました。
ものづくりする人間は制作に集中してしまい、自分の言葉を発信するのがついつい億劫になりがちです。
刺している途中、たくさんたくさん思うことがありました。
私は重めの刺繍が好き、と自分で思っていないのについついボリュームを出してしまいます。
今回は重さの出る刺し縫いは一部兜部分にしか使わず、縫いきり中心でしたのに..........。
それにしても、縫いきりという本当に基本的な手法にも今回は深く感動しました。
ヨーロッパ刺繍でいうサテンステッチとほぼ同じですが何代にも渡って洗練されてきた日本刺繍の真髄の一つと言って良いのでは、と思いました。
それはまず条件が許さない時もありますが、布目に沿って刺す、ということです。フリーステッチでありながらキャンバスワークでもあります。(菅縫いなど他にもありますが)
静謐な優雅さが生まれますし、大勢の人間で一つの作品を刺す場合、布目がガイドになって統一感を生み出すことができます。師匠から弟子に受け継ぐことも容易です。
縫いきりを発展させた優雅な手法も数多く、作品を丈夫にするとともにさらに艶を与えたりします。
先人たちにまさに頭の下がる思いでした。
少し話がそれましたが、立体感を出したい、私はこの一念だったと思います。せっかく刺すのだから生きているように、声が聞こえるように刺したいのです。額絵ですからまあ許されるかな、と。
前回は上半身が完成、とアップしています。
下半身はまず袴を刺し、腰回りの脇盾、長側、草摺?と呼ばれるらしい糸でかがられた部分を刺し、それを引き締める帯、刀、弓、左手と刺し進みました。
滑らかに見せたい着物とは対照的にしたくて、腰回りの刺繍は糸をよって勇ましさを表現しました。鎧を引き締める帯も硬いイメージで刺しています。
実物で刀や革を表現している部分はやはり繊細にしたいので輝き優先で釜糸をそのまま刺しています。
刺繍が込み入ってくると、どの方向から刺せばスムーズか、を常に考えます。
いつも頭にあるのは最初にヨーロッパ刺繍の先生に教えていただいた『入る針は太く出る針は細い』という事。文字通り針を入れる瞬間は大きな穴が開くので金糸などの糸を傷つけないようにこの糸周辺は針を出す方向で刺します。それに、刺繍が込み入っている場所に新たに針を入れるのはかなり力が必要で手が痛くなりますが、針を出すような刺し方をすればスムーズです。こういったことはなかなか教えていただけないことなのでとても感謝しています。
またオートクチュール刺繍の先生が、『刺す場所や素材によって針を変えてください。ご自分が使いやすいからと同じものばかり使ってはいけません。』とおっしゃったことも同様です。
ずいぶんいろいろな刺繍を学んできましたが、やはりいろいろなキャリアが私のスキルになっているのだなあと感じます。
最後に足元。
飾り縫いの”疋田がけ”で刺しています。ボリュームの出る刺し方ですが、やはり幼な子とはいえ思い鎧兜装束の足元ですから軽く済ますわけにはいきませんでした。
最後に私の銘を刺して完成です。思い出深い作品になりました。
日本刺繍作家:石原 英(Hanabusa Ishihara)