絹糸から見る世界
私は日本刺繍作家ですから、ほぼ毎日絹糸を使用します。
今回の作品に使用しているものはこんな感じです。
ツヤツヤの日本刺繍糸は東京京橋の越前屋さんで購入できる京都の糸を愛用しています。京都の糸なのに10スガでなかなか使いやすいです。
他のブランドの糸も使用しますが、こちらの糸の艶や発色が好きで一番のお気に入りです。といっても全てのブランドを試したわけではないのですが。
また越前屋さんオリジナル絹のラメ入りレース糸、またろ刺し用錦糸、金銀糸など。
これをメインにエンゼルキングさんの正絹金銀ラメ糸なども。
本当に色々な種類の金銀糸、絹糸にお世話になっているなあとしみじみ思います。
そしてそれぞれ、あ、足りそうもない、とネット注文すれば翌日にはほぼ手に入ります。便利なことこの上なし。
............けれど................。
もしお蚕さんがいなくなったら?
お蚕さんのお世話する人がいなくなったら?
糸にしてくれる人がいなくなったら?
染めてくれる人がいなくなったら?
売ってくれる人がいなくなったら?
届けてくれる人がいなくなったら?
そしてそして、私は自分が美しい、素敵、と感じたものだけをデザインして刺繍しています。
つまり、そう感じられるものが無くなったら................、そんな恐ろしい世界になってしまったら...............。
私は刺繍することができません。
今の世界を私の小さなメガネから覗いてみても、もしもの仮定の可能性はゼロではないような気がします。穏やかな平和あってこその享受できる日常なのですね。そしてそれは当たり前ではありません。
実際、悲しい事に今そんな場所があちらこちらで存在しています。
私のインスタのフォロワーさんの中にはロシア、ウクライナ、イスラエルの方もいらしゃいます。時にはコメントをくださる方も。世界は狭いなあ、と感じていました。そして、美しいものを愛する気持ちは万国共通だなあとも。
その方達は今どんな思いでいらっしゃるのでしょう。また、紛争地はこれ以外にもたくさんあるようです。
私にできること..........せいぜい募金やチャリティーくらいしか今はありませんが、私のささやかな発信がもしかして何か力を生み出せたらなあ、と祈るような気持ちで作品作りをしています。
日本刺繍作家:石原 英(Hanabusa Ishihara)