紅梅、白孔雀の刺し方決め
白孔雀を囲む様々な紅梅や後から変更した大きな一輪が刺せました。
重なり合うもの、小さいもの、大きなもの、横を向いているもの、いろいろなタイプの紅梅です。
これはデザインの中のほんの一部ですが、紅梅はデザインのほぼ半分を占めているので表現方法が決まったことでとても安堵できました。
光の扱い、花びらの濃淡、花びらの重なり、刺す前は『こんなたくさんの小さな紅梅、本当にできるかしら。』ととても落ち着かない気持ちでした。それでも手を動かしているとなんとかなるものですね。
経験の成せる技かもしれませんが、いつでも新しいことにチャレンジしているので始める前はとても不安です。それでも一日中考えていたり、手を動かしてさえいれば、ふっとアイディアが湧いてきます。
めちゃくちゃ集中するとそうなるのだと思いますが、すでに答えは用意されていて、何者かに教えていただける瞬間があるのかもしれません。
そんなふうに感じていたりします。
次の課題は花芯。
普通梅の花芯といえば白っぽいイメージですが、私がモデルにした熱海梅園の紅梅の花芯は赤。なので赤やピンクの金糸混じりのろ刺し用錦糸を使うことにしました。
まるで花火のようで、それでいて梅の香が漂ってくるようで、刺していて嬉しくなりました。
テクニックは”足長さがら”です。
knot、結び玉を作る手法の一種です。一カ所うまくいかないと全てがダメになる、と思われがちな手法ですが、コツを掴めば失敗なく楽しく進める可愛らしい手法です。
そして孔雀の羽根の”ポイント”。
今回は白孔雀です。白孔雀はインド孔雀の変種だそうです。オスはお馴染みの目のような模様があるようですが、メスにはそういった模様はありません。目になる寸前、といった感じの模様があるだけです。さらに個体によっては多少目模様のあるものもいるのだとか。そして、一番外側にはまるで三日月のような羽根まであります。
なので、孔雀から連想される目のような模様はほんの少しにしてみました。
紅梅と白孔雀、というと何やら古典的な図案が思い浮かびますが、孔雀の目模様が目立たなければモダンな感じになるかもしれません。
とりあえず羽根の中心の芯とポイントになる模様三つを刺してみました。
こんな感じかな。
これから残りのポイントを刺してあとは後羽根全体を覆うレースのような繊細な羽根を刺していきます。
今はただの白い線がどんな風に変身するのか、我ながらワクワクしています。
日本刺繍作家:石原 英(Hanabusa Ishihara)