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デザイン画、やっと着布!

何度も何度も、はっきりいうと5回目にしてやっとデザインを帯地に写すことができました!

濃紺地に胡粉でクッキリと写せています。

この帯地は『銀通し』というもので、素敵な濃紺の絹に星空のように銀が散りばめられています。

とっても美しいのですが、実は下絵を写すのには苦労させられます。

白っぽい布ならチャコペーパーで写すのはもちろん、デザイン画を布の下に置いてさらにその下に置いたトレーサーで光を当てて布の上から消えるボールペンでなぞる、という楽技が使えるのですが、光が透過しない濃い色の場合は白いチャコペーパーで写すしかありません。デザインがシンプルであればそれだけで良いかもしれませんが、今回のように布いっぱいで繊細なデザインでは刺しているうちに擦れて消えてしまうので、さらに胡粉でなぞり書きする必要があります。

まず、こんなふうに白いチャコペーパーで図案を写して.........(ハズキルーペが大切な相棒です!)

チャコペーパーを外してみると............

  何にも写ってない!

..........わけはなく、布にうっすらと線の軌跡が。

とてもとても刺繍できるレベルではありません。ただ、不思議なことに左端の梅の枝だけやけにクッキリ写っています。図案が大きくてチャコペーパー1枚だけでは足りず、もう1枚を少し重ねて描いた部分です。

そうか!2枚重ねればクッキリ写せるんだ!

と思い、2枚重ねてもう一度。でもやっぱり写ってない( ; ; )

え?別にチャコペーパーが裏だったわけでもないし。もしかしてチャコペーパーだと思って使ったけど、デザイン画を最初に描いた紙だったかな?そんなバカなと思いますが、実際2枚の紙は質感がよく似ています。置いてある場所も一緒。

あ〜あ、やっちゃった、なんて私はおっちょこちょいなんだろう!しかも、もう余分なチャコペーパーはありません。Amazonで注文して明日またチャレンジすることにしました。左端は憎らしいくらいクッキリ写っているので、図案の位置がずれないよう用心深く用具をしまいました。

そして次の日、届いた新しいチャコペーパーの裏表をしっかり確認して2枚重ねにして図案写し3度目。

けれど..........何故か写りません。どうして?どうして最初に写した時は重なった部分がクッキリ写ったのに!同じメーカーの製品でも品質にムラがあるの?

3枚重ねてやってみる?いえいえとんでもない。最大限に注意して図案がずれないよう、写りやすいようありったけの力を込めて集中したのに、もうこれ以上同じことを試すのは肉体的にも無理!

とはいえ、図案を写さないことには始まらないので、一か八かクッキリクッキリトレースペンの跡だけが付いている布にデザイン画と照らし合わせながらチャコペンシルで直接跡をなぞることにしました。く〜!!!!

そして描けたのが下の画像です。やれやれ........。

これでも下絵としていけそうですが、やはり刺しているうちに消えてしまいそうなので、胡粉で筆でなぞります。

ね、左下が筆でなぞった部分です。安心でしょ?

このブログの最初の写真が全てなぞった完成形です。

胡粉は日本画の白絵の具ですが、日本画のように膠で溶かず、水で溶くので、刺繍をするとみんなとれていってくれます。昔から日本刺繍のトレースグッズです。

筆は最高に細いものを使います。

この筆はラファエルというフランスの水彩用の面相筆です。

筆?筆って大変そう、こんなにたくさんなぞらなきゃならないし、と思ったのですが、やってみると気持ちいい!です。

私がこの作業をするのは前々回の『りんご守り』の時以来2回目です。慣れたのか、その時よりずっと楽に作業できました。それどころか、昔の職人さんにでもなったような気になり、筆に含ませた水溶き胡粉がまるで相棒のようにさえ思えて、チャコペンシルよりずっと愛着が持てました。

今更ながらですが、筆ってなんて素敵な筆記具でしょう!使い慣れないので敬遠しがちだったのですが、今回まるで自分の体の一部のようにフィットしました。筆に含ませる量で筆記できる時間を調節したり、濃淡も思いのまま。これからはできるだけ積極的に使いたいなと思いました。

そして筆作業は癒しのようにも思えてきて、一気に楽しく図案を移すことができました。

これでやっと刺繍が始められます♪( ´θ`)ノ

日本刺繍作家:石原英(Hanabusa Ishihara) 

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